少し前になりますが、岡山県の奈義町にある「奈義町現代美術館」に行ってきました。
神戸から車で約3時間。
のどかな奈義の山あいの町にぽつんと現れるこの美術館は、
建築家の磯崎新さんが設計したもので「太陽」「月」「大地」という3つのテーマの展示室があります。
それぞれの部屋はアーティストとの共同制作でつくられていて、
ただ作品を「鑑賞する」というよりも、空間そのものが一つの作品のような不思議な感覚でした。

展示室「太陽」
ここに来た人達の身体に、まず日常と異なった身体経験を強制し、不思議な雰囲気を生まれさせ、そして考える。
普段の仕事では、図面のラインや素材の納まりを考えることが多いのですが、
この建物の中では、そういった「形」よりも、人がここに足を踏み入れた時に
どんなふうに空間を感じるか、
時間と共に移り変わる光の入り方や音の響き、ひんやりとした空気の流れなど、
目に見えないもっと感覚的な部分を一番大切にされている気がしました。

展示室「大地」
風や光を反映させ、奈義の地と水と触れ合いうつろう空間。
…とはいえ目にみえる床と壁の細い隙間に、
一見ゴミが入り込んで大変そうに思いながらも、実際は壁のひび割れ防止の役目をもっていたり、床を壁の境界のラインをはっきりシャープに見せるデザインになっていたりと、
美しさにつながる細やかな工夫なども、美術館の随所に散りばめられていました。



「建築が生きている」ってこういうことなのかもしれないなぁと思います。